稲盛和夫 著『生き方』に学ぶ感謝の心

ご自身が生きる上での閉塞感や行き詰まり、先の見えない仕事への不安を抱えて悩む方へ。

現状を打破するきっかけが見つかれば、すぐにでも実践したいところですよね。

本記事では、稲盛和夫 著『生き方』を皆様との橋渡しをさせて頂くような感覚でご紹介いたします。

稲盛和夫 著『生き方』に学ぶ感謝の心

 

1.稲盛和夫氏とは

稲盛和夫 京セラ 生き方

「生き方」で有名な稲盛和夫氏

「生き方」「稲盛和夫」「京セラ」「KDDI」「日本航空再建」のキーワードを聞いて、ピンとくる方も多いでしょう。

本記事で紹介させていただくのは、あの京セラ、第二電電の創業者であり、元日本航空名誉会長 稲盛和夫氏の著書『生き方 人間として一番大切なこと』です。

65歳を迎え、得度し、仏門の世界を通してビジネスの世界や人生そのものを俯瞰した著書に、嘘偽りや美辞麗句の紹介文は無用であり、「紹介」という言葉を使うことさえも恐れ多く感じるところですが、生きる上での閉塞感や行き詰まりを打破するきっかけを求める方を想定しています。

  • 1932年、鹿児島県出身
  • 鹿児島大学工学部卒業(専門は石油化学を中心とする有機化学)
  • 卒業後、京都の碍子製造会社 松風工業に入社
    アメリカの大手メーカーとは全く異なる方法で新素材の開発に成功
  • のちに独立
  • 1959年(27歳)、京都セラミック株式会社(現在の京セラ)を設立
    半導体部品などの事業を通じ、サイズやコストの面から携帯電話市場の広がりを予測
  • 1984年、52歳の時にDDI(第二電電企画株式会社)を設立
  • 2000年秋、国際通信最大手のKDD、トヨタ系列のIDOと、DDI主導の吸収合併に成功し、現在のKDDIを設立
  • 1984年には京セラの株式や現金など200億円を拠出して稲盛財団を設立
    先端技術、基礎科学、思想・芸術の各分野で業績を上げ貢献した人たちを顕彰する国際賞「京都賞」を創設
  • 2010年2月、日本航空の会長に就任、再上場を果たす
  • 2013年、日本航空取締役を退任

🔗稲盛和夫 OFFICIAL SITE

日本の大企業を率いるトップの方たちは、常に難しい判断や人には言えない孤独と闘っています。プライベートの時間には、山寺で座禅を組んだり、瞑想をしたり、写経をしたりと自分の心を常にニュートラルにして正しい経営判断ができるよう自己管理しています。また、現役を退いた後に仏門に入る方もおられることはご存知でしょうか。ビジネスと仏門、ビジネスと自然・宇宙、全くもって違う領域ですが、突き詰めた先にはある種の真理があるといいます。

 

2.「思いを実現させる」

修行 仏門 瞑想

瞑想や仏門の修行から生まれる気づき

この本は5つの章から成り立ちます。

それぞれの章のテーマの下に、いくつものエピソードが綴られています。小見出しを見るだけでも、稲盛氏が何を伝えたかったのかひしひしと伝わってきます。

小見出しを通読して、大筋をイメージし、そして本文を読み込む、『生き方』にはそんな読み方があっているのではないでしょうか。

第1章では「思いを実現させる」と題し、目の前の仕事を成功に導くためにどのようなマインドで毎日を過ごせば良いのか、現場主義かつ技術者というバックグラウンドから、日々の仕事に活かせるヒントを与えてくれます。順に小見出しを見てみましょう。

  • 求めていたものだけが手に入るという人生の法則
  • 寝ても覚めても強烈に思いつづけることが大切
  • 現実になる姿が「カラーで」見えているか
  • すみずみまでイメージできれば実現できる
  • 細心の計画と準備なくして成功はありえない
  • 病気になって学ばされた心の大原則
  • 運命は自分の心次第という心理に気づく
  • あきらめずやり通せば成功しかありえない
  • 努力を積み重ねれば平凡は非凡に変わる
  • 毎日の創意工夫が大きな飛躍を生み出す
  • 現場に宿る「神の声」が聞こえているか
  • つねに「有意注意」の人生を心がけよ
  • あふれるほどの夢を描け、人生は大飛躍する

鉄のような強靭なマインド・情熱を持って仕事に臨むことこそが、仕事の成功への近道と受け取ることができるでしょう。最近よく見かけるテクニックを重視したビジネス書とは明らかに違いますよね。小手先のテクニックを学ぶ以前に、目標を持って仕事を行う人間の基礎となる心構えを説いてくれているように感じます。

何も企業の方だけに通じる内容ではありません。自営業の方、飲食店の方、これから店舗をオープンさせようとしている方、何らかの結果を求める職業の方であれば全てに共通します。

「現実になる姿が「カラーで」見えているか」、どんな場面にでも必要な問いかけです。

 

3.「原理原則から考える」

神社 狛犬 眼差し

狛犬のような眼差しで現場を見る

続く第2章では「原理原則から考える」と題し、京都セラミックを経営していく中での行き詰まった経験から、人生と経営に共通する原理原則を説いています。

  • 人生も経営も原理原則はシンプルがいい
  • 迷った時の道しるべとなる「生きた哲学」
  • 世の風潮に惑わされず、原理原則を死守できるか
  • 知っているだけではダメ、貫いてこそ意味がある
  • 考え方のベクトルが人生すべての方向を決める
  • 自分の人生ドラマをどうプロデュースするか
  • 現場で汗をかかないと何事も身につかない
  • ただいま、このときを必死懸命に生きる
  • 「好き」であればこそ「燃える」人間になれる
  • 自分に打ち勝ち前に進め、人生は大きく変わる
  • 複雑な問題も解きほぐせばクリアに見えてくる
  • 国際問題、国家間の摩擦も単純に発想してみる
  • 外国との交渉は常識より「リーズナブル」

稲盛氏が説く原理原則、それは「ー人間として何が正しいのかー」この一言に尽きます。

経営に関する様々な分岐点に立ち、稲盛氏が常に自身の中に立ち返って基準にした原理原則です。

そして2つ目が「人生の方程式」です。「人生・仕事の結果=考え方 × 熱意 × 能力」と表されます。「考え方」にはマイナス点も存在するため、熱意や能力がどれだけ高いものであっても、考え方がマイナス方向に向かってしまうと掛け算の答えは大きなマイナスの値になってしまいます。

 

4.「心を磨き、高める」

水滴 水草 池

自分を高めることにつながる「内省」

第3章では「心を磨き、高める」と題し、2章で説かれた正しい「原理原則」を導くためにはどのような日々の努力が必要か、仏門の教えから学ぶことはたくさんあるようです。

  • 日本人はなぜその「美しい心」を失ってしまったか
  • リーダーには才よりも徳が求められる
  • つねに内省せよ、人格を磨くことを忘れるな
  • 心を磨くために必要な「6つの精進」
  • 幼い心に感謝の思いを植えつけた「隠れ念仏」
  • どんなときも「ありがとう」といえる準備をしておく
  • うれしいときは喜べ、素直な心が何よりも大切
  • トルストイも感嘆した仏教説話が描く人間の欲深さ
  • 人を惑わせる「三毒」をいかに断ち切るか
  • 「正剣」を抜いたら成功、「邪剣」を抜いたら墓穴を掘る
  • 働く喜びは、この世に生きる最上の喜び
  • お釈迦様が説く「六波羅蜜」を心に刻め
  • 日々の労働によって心は磨かれる
  • 労働の意義、勤勉の誇りを取り戻そう

人の行いの裏に潜む心について、内省・感謝・欲という観点から洞察し、心を磨く指針として次の「6つの精進」を挙げています。

  • だれにも負けない努力をする
  • 謙虚にして驕らず
  • 反省ある日々を送る
  • 生きていることに感謝する
  • 善行、利他行を積む
  • 感性的な悩みをしない

ここで本記事のテーマである「感謝の心」について考えてみたいと思います。

稲盛氏の説く「感謝」とは、どんなときも「ありがとう」といえる準備をしておくこと。しかし、ふとした瞬間に自分の内に傲慢さが沸き上り、感謝の念とはかけ離れた言動をしてしまうーそんな瞬間があります。そんな自分を戒めるために必要なのが「何があっても感謝の念をもつ」のだと理性にインプットしてしまうことであるといいます。感謝の気持ちが湧き上がってこなくても、とにかく感謝の思いを自分に課すこと、つまり「ありがとう」といえる心をいつもスタンバイさせておくことが大切であると。

さらに感謝と満足の関係について次のように説明しています。感謝は満足から生まれるものであって不足や不満からは生まれてきません。満足や不足とは「足るを知る」心によって左右され、不平不満が絶えない人がいる一方で、どんなときでも心が満ち足りている人もいます。あくまでも心の問題であり物質的にどんな条件下にあろうとも、感謝の心を持てればその人は満足感を味わうことができます。

満足しているから感謝できる、足りているから感謝できるということではありません。まずは「ありがとう」という感謝の心を理性に入れることにより「足るを知る」心が作られる、そして物質的には足りなくても満足感を味わうことができるようです。

 

5.「他を利するところにビジネスあり」

灯篭 灯り 神社

「他者を照らすところにビジネス有り」

第4章では「利他の心」について、ビジネスの場面で遭遇する経営判断を例に「他を利する」ところにビジネスの原点があることを説いています。

そして現代の日本人に忘れられている利他の心を取り戻し、日本が誇る人格教育こそが新しい日本を築くための最大の投資だとしています。

  • 托鉢の行をして出会った人の心のあたたかさ
  • 心の持ち方ひとつで地獄は極楽にもなる
  • 「他を利する」ところにビジネスの原点がある
  • 利他に徹すれば物事を見る視野も広がる
  • 毎夜自らの心に問いかけた新規事業参入の動機
  • 世のため人のためなら、すすんで損をしてみる
  • 事業の利益は預かりもの、社会貢献に使え
  • 日本よ、「富国有徳」を国是とせよ
  • このまっとうな「美徳」を忘れてしまっていないか
  • いまこそ道徳に基づいた人格教育へとシフトせよ
  • 同じ歴史をくり返すな、新しい日本を築け
  • 自然の理に学ぶ「足るを知る」という生き方
  • 人類が目覚めたとき「利他」の文明が花開く

キーワードは、次の2つです。

  • 「理を求むるに道あり」
  • 「財を散ずるに道あり」

換言するならば、

  • 利益追求を行うには、人の道に沿ったものでなければならない
  • どんなことをしても儲かればいいというのではなく、利を得るにも人間として正しい道を踏まなければならない
  • 商売で得た利益を使うことはさらに難しく、利他の精神で得たお金は利他の精神で使うべきである

稲盛氏がそのような視点で財を使った先が、「京都賞」です。

1984年、京セラの株式や現金など200億円を拠出して稲盛財団を設立し、先端技術、基礎科学、思想・芸術の各分野で業績を上げ貢献した人たちを顕彰する国際賞「京都賞」を創設されました。今では世界的にステイタスのある賞となっていることは間違いありません。

 

6.「宇宙の流れと調和する」

山もみじ 裏側 葉

視点を変えることで見える景色が変わる

第5章では「宇宙の流れと調和する」と題して議論の次元を「宇宙」に移し、順を追ってより高い次元へと導いてくれます。

わたしたちを取り巻く「運命」と「因果応報の法則」について洞察、人間は運命によって支配される一方で自らの善行によって運命を変えていくことができると結論付けています。

  • 人生をつかさどる見えざる大きな二つの力
  • 因果応報の法則を知れば運命も変えられる
  • 結果を焦るな、因果の帳尻はきちんと合う
  • 森羅万象を絶え間なく成長させる宇宙の流れ
  • 偉大な力が全てに生命を吹き込んでいる
  • 私はなぜ仏門に入ることを決意したか
  • 不完全でもいい、精進を重ねることこそが尊い
  • 心の中心に真理とつながる美しい「核」がある
  • 災難にあったら「業」が消えたと喜びなさい
  • 悟りを求めるより、理性と良心を使って心を磨け
  • どんなちっぽけなものにも役割が与えられている
  • 人のあるべき「生き方」をめざせ、明るい未来はそこにある

人生が運命通りにいかないのは、そこに因果律のもつ力が働くから。そして善き行いがすぐに善い結果につながらないのは、そこに運命が干渉してくるから。さらに運命よりも因果応報の法則の方が若干強いというのです。人生を律する2つの力にも力関係が働いており、因果律のもつ力の方が運命の力よりも若干上回っているため、運命さえも変えることができるというのです。それも因果応報の法則を使うことで。

「善きことを思い、善きことを行うことによって運命の流れを善き方向に変えることができる。人間は運命に支配される一方で、自らの善思善行によって運命を変えていける存在でもあるのです」

 

7.皆様に推薦する3つの言葉

影 日差し 石段

発見と美を生み出す謙虚な心

ここまで各章ごとの小見出しを追いかけ、『生き方』の大筋をご紹介いたしました。

章を追うごとに目の前の仕事の成功、人生と経営の原理原則、日々の研鑽・感謝、自利利他の精神で行う商売、そして運命と因果応報の法則とステップを踏んでより高い次元へと誘ってくれました。最後に『生き方』に散りばめられる稲盛氏の多くの言葉を代表し、次の3つの言葉を皆様に推薦いたします。

●「手の切れるようなものを作れ」

京セラ時代、稲盛氏が部下の技術者に対して言い放った言葉です。お客様の要求する精度をクリアすることはもちろん、その製品を目にした時、誰しもが畏敬の念を抱いてしまうような製品を稲盛氏はイメージし、それが「カラーで」見えていたのです。技術者だけでなく、結果を出さなければならないすべての仕事・職種に共通するのではないでしょうか。手の切れるような料理を作れ。手の切れるようなプロポーザルを作れ。手の切れるようなプレゼンを行え…すべてにおいて「手の切れるような」「圧倒されるような」何かを求めることです。挑戦は間違いなく自分を次のステージへと引き上げてくれます。

●「人間として正しいかどうか」

同じく稲盛氏が京セラ時代に、海外の企業に自社製品の営業を行っていた時に実感されたことです。取引実績が上がるにつれて稲盛氏が気づいたこと、それは特にアメリカでは物事を判断するのに「リーズナブル(正当である)」という言葉がよく使われたようです。その正当性とは、社会的な慣習や常識ではなく、彼ら自身が持っている原理原則や価値観であったとのこと。その背景には、日本の法律(成文法)とアメリカの法律(判例法)の違いがあり、個々のケースに合わせ自分の信念に照らし合わせて判断するという文化が浸透しているからではないかと。国によって細かい違いはあるにせよ、「人間として正しいかどうか」は、全世界に共通するビジネスの基本なのかもしれません。

●「動機善なりゃ私心なかりしか」

稲盛氏が電気通信事業に参入するときに、自身に問い続けた言葉です。電電公社がNTTへと民営化され他社の参入が可能になった時、一番乗りしたのが京セラでした。「周りからよく見られたいとの気持ちから参入するのではないか」「本当に国民のためを思っての参入なのか」「邪な動機はないのか」と毎晩就寝前に問いかけていたと言います。そして自身の中で動機が固まった時、DDIの設立に踏み切ったのです。経営判断のみならず、自分が起こす行動の一つ一つに問うことができますよね。「このプロジェクトを動かすことにどんな意味があるのか」「顧客のためを思ってのことなのか」「自社の利益を追いかけ、顧客の利益は後回し・後付けの理由になってはいないか」日々の仕事において、営業に出る前、プレゼンの前、1日の仕事が始まる前に自分の胸に手を当て目を閉じ、問いかけたい言葉の一つですよね。

滝 修行 私心

私心を取り除く「行」

最後に…

ここまでの長文をお読みくださいまして、本当にありがとうございます。
本記事では「稲盛和夫 著『生き方』に学ぶ感謝の心」と題し、

  • 稲盛和夫氏とは
  • 「思いを実現させる」
  • 「原理原則から考える」
  • 「心を磨き、高める」
  • 「他を利するところにビジネスあり」
  • 「宇宙の流れと調和する」
  • 皆様に推薦する3つの言葉

の7つをご紹介しました。

時代が変わりビジネスのスタイルが変わっても、世の中が便利になろうとも、ビジネスを行う主体が人間である限りこの本は永久不滅の哲学書となるのではないでしょうか。皆様にご紹介するにあたり、著者の許可もなく『生き方』よりたくさんの引用をしてしまいましたが、生き方や仕事に悩む皆様とこの本の橋渡しと感じていただければ幸いです。

ご覧いただいた皆様の、公私にわたる素晴らしい発展をお祈りしています。

以上、
「稲盛和夫 著『生き方』に学ぶ感謝の心」でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。