トラクターにありがとう

家庭菜園や趣味の範囲で農業を営まれる方で、新たにトラクターを購入されるという方へ。

トラクターは農業の発展に大きく貢献し、人類の歴史に深く関係していますよね。

本記事では「トラクターにありがとう」と題し、トラクターへの3つの感謝をご紹介いたします。

トラクターにありがとう

 

1.偉大なる畑の耕し手

トラクター ロータリー 耕耘

エンジンの動力で回転するロータリー

トラクターがない時代は、畑の耕耘は全て家畜や人手によって行われていましたよね。馬やロバを使い、そして鍬を使い、少しずつ少しずつその面積を広げていました。それが機械の発展により、エンジンの動力でロータリーを回し、前へゆっくりと進みながら畑を耕運することができるようになりました。作物を育てるために土をやわらくし、空気を入れ、地表に蒔いた肥料を混ぜ、畝を立てて均す、これら一連の作業を一走りだけでやってくれます。

さらにこれらの働きに加えて、マルチ張り・種まき・覆土・鎮圧までをも一気にやってくれるアタッチメントを取り付けることもできます。一つの作物を広大な面積で作る大規模農家が生まれ始めたのもトラクターのおかげでした。また作物を作らない畑には雑草が生えてきます。それを土の中に耘(うな)いこんで、雑草退治をしてくれるのもトラクターです。しかし、近年ではパワーのある超重量級トラクターが増え、圃場を何度も走ることで、野菜が育つ層の下に硬盤層(心土)と呼ばれる固い土の層ができてしまいました。その結果、雨が地中の奥深くまで浸み込まずに、少しの雨でも水浸しになってしまいますよね。

サブソイラー プラソイラー カツノ

心土破砕に欠かせないサブソイラー

そこで硬盤層を破砕するアタッチメントが生まれました。サブソイラーやプラウと呼ばれる器具で行われる「心土破砕」という作業です。地中30cmから40cmまでを鉄の爪で引っ掻き、掘り起こすことで排水性を高める作業です。田んぼなんかでは、暗渠や弾丸暗渠と呼ばれる地中に排水溝を作ることのできるアタッチメントも存在します。

30馬力以上のトラクターであればほとんどのアタッチメントがつくようですが、便利なトラクターが大型化すればするほど土は固まり、心土破砕に必要なアタッチメントが必要になる…トラクターの大型化は決して便利な面だけではなさそうですよね。

 

2.荷物の運搬車

リフト トラクター 搬出

フォークリフト代わりのトラクター

特に北海道の酪農家や玉ねぎ農家では、荷台を牽引するための車として重宝されています。酪農家では、冬の間に牛に食べさせる牧草を夏の間に刈り取らなければなりません。刈り取ったものを束ねてビニールで巻き、それを大型トレーラーに積んで、小屋に持ち帰ります。牧草を刈り取り、束ね、ビニールで巻いてしまう機械も、トラクターの動力で動きます。

玉ねぎ農家では、収穫した玉ねぎを高さ1m以上もある鉄のコンテナに入れ、それを貯蔵庫に持ち帰ります。鉄のコンテナに入れた玉ねぎは何百キロという重さになるため、ちょっとやそっとでは持ち上がりません。そんな時は大型トラクターの出番です。トラクターの後方に鉄の爪をつけてフォークリフトのように軽々と持ち上げてしまうようです。それもぬかるんだ畑のど真ん中で。

そのほか、農薬を撒く機械を後ろに積んで、アームを広げながら何百リットルという散布液を巻いたり、家から圃場まで荷物を牽引したりと、その役割は多岐にわたります。北海道の道路をモンスター級のトラクターが轟音を響かせながら走り去る様子は圧巻ではありますが、農業もここまで大規模化したかという複雑な思いがしますよね。

 

3.知られざる戦車とトラクターの関係

トラクター セキレイ 虫

トラクターの後ろで虫を探すセキレイ

戦車はトラクターから生まれたーこれが事実のようです。火を吹き砲弾を放ちながら恐ろしい速さで侵攻する戦車、トラクターをベースに湿地帯を走れるように改造すれば西部戦線を突破できるのではないかーイギリス軍はこう考えました。1916年、イギリス軍によって世界初の戦車マークⅠが49台投入され、その後フランス、ドイツが開発を進めていったようです。

PRESIDENT Online にこんな記事があります。「🔗“トラクター史”を知らずに人類史を語るな」(京都大学人文科学研究所准教授 藤原辰史先生)

「私たちの生活は、戦争で発展した技術のうえに成り立っている。多くの技術は戦争の影を背負っているのだ。牧歌的なイメージのある「トラクター」もそのひとつ。「戦車」はトラクターから生まれた。京都大学の藤原辰史准教授は、「人と機械のかかわりを考えるためには、トラクターの歴史が役にたつ」という。ここでは、トラクターがふたつの世界大戦にもたらした影響を紹介しようーー。」さらに、藤原先生の書籍が紹介されています。『トラクターの世界史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち』(中央公論新社)

トラクター 遠景 ミラー

正と負の側面を持つトラクター

最後に…

ここまでの長文をお読みくださいまして、本当にありがとうございます。
本記事では「トラクターにありがとう」と題し、

  • 偉大なる畑の耕し手
  • 荷物の運搬車
  • 知られざる戦車とトラクターの関係

の3つをご紹介しました。

オートバイが鉄の馬に例えられることはよくありますが、トラクターが鉄の馬に例えられるのは珍しいですよね。畑を耕すという牧歌的な正の面と、戦争の影という負の側面を合わせることによって、トラクターの本質、果てはトラクターを作り出した人類という摩訶不思議な動物への洞察が深まるのかもしれませんね。

以上、
「トラクターにありがとう」でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。